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2026年世界投資展望:BlackRock・JPモルガンが読む相場

2026年世界投資展望

2026年の投資展望として、世界を代表する2大資産運用機関が相次いで注目のレポートを公表しました。BlackRock(ブラックロック)の試算によれば、AIインフラへの設備投資(キャピタルエクスペンディチャー)は2023年の1,500億ドルから2026年には5,000億ドルへと約3.3倍に膨らむ見通しです。同時期、J.P. Morgan(JPモルガン)グローバルリサーチは、S&P 500(米国大型株指数)の2026〜27年の利益成長率を年13〜15%と予測し、グローバル株式に対して強気のスタンスを維持しています。世界最大級の資産運用会社2社がほぼ同時期に公表したアウトルック(投資見通し)は、「AIスーパーサイクル(超大型景気循環)」という同一のテーマを中心に据えながらも、リスク評価において注目すべき温度差を見せています。本記事では両社のレポートを丁寧に読み解き、日本人個人投資家が2026年の相場を乗り越えるためのヒントを提供します。

目次

2026年 投資展望:BlackRock BII が示す3つのメガテーマ

BlackRock Investment Institute(BII、ブラックロック投資研究所)は2025年12月に「2026 Investment Outlook(投資アウトルック)」を公表し、今後の市場を形成する3つの主要テーマを提示しました。これらは個別のトレンドではなく、相互に連鎖する構造的なシフトとして位置付けられています。

①「ミクロはマクロ」:AI投資の規模が経済全体を動かす

BlackRockが第1のテーマとして挙げるのが「Micro is Macro(ミクロはマクロ)」です。AIインフラへの設備投資があまりに巨大化した結果、個々の企業の資本支出が経済全体に影響を与えるほどの規模に達しているという分析です。

具体的には、AIデータセンターや半導体製造設備への投資が、米国GDPの成長に大きく寄与しています。BlackRockの試算では、AIに関連した技術セクターの設備投資が2024年上半期において消費支出を上回る規模でGDP成長に貢献しました。この「投資先行・収益後追い」の構造が2026年も続くとみられており、投資家はAIが最終的に生み出す収益がこれほどの投資規模を正当化できるかどうかを見極める必要があります。

BlackRockはこの点について、「AIが生み出す収益は投資規模を正当化できる可能性がある一方で、その恩恵がどれだけテック企業に帰属するかは現時点では不透明」と慎重な姿勢を示しています。米国株式に対してはオーバーウエイト(強気)スタンスを維持しながらも、銘柄選択の重要性を強調しています。

②「レバレッジの拡大」:金融システムに潜むリスク

第2のテーマは「Leveraging Up(レバレッジの拡大)」です。AI投資は先行投資が多く、収益は後からついてくる構造です。この「時間的ラグ」を埋めるために、企業は公開市場・私募市場を通じた資金調達(デットファイナンス)を拡大せざるを得ません。

問題は、AIを主導する少数の巨大テック企業だけでなく、財政赤字が膨らむ各国政府も同時に借り入れを増やしている点です。こうした複合的なレバレッジの拡大は、金融システム全体の脆弱性を高めます。BlackRockが特に警戒するのは「長期金利の急上昇(ボンド・イールド・スパイク)」です。金利が急騰した場合、AI企業のバリュエーション(株式価値評価)に深刻なダメージを与えうることを同社は認識しています。

この文脈で、BlackRockはクレジット市場(社債・ローン市場)に積極的な投資機会を見出しています。特に証券化クレジット(セキュリタイゼーション)やCLO(ローン担保証券)、投資適格社債(インベストメント・グレード・コーポレートボンド)において、リスクに見合ったリターンが期待できると評価しています。

③「分散の幻想」:伝統的な分散投資が機能しにくい時代へ

第3のテーマ「Diversification Mirage(分散の幻想)」は、日本の個人投資家にとって最も身近に感じられるかもしれません。株式と債券を組み合わせた伝統的な「60/40ポートフォリオ(株式60%・債券40%の分散投資)」が、高インフレ・高金利環境下では期待通りの分散効果を発揮しにくくなっているという指摘です。

BlackRockが推奨するのは、単なる資産クラスの分散から「クロスカントリー(国間)の相対価値機会」への転換です。米国・欧州・アジア間で企業収益のトラジェクトリー(軌道)や中央銀行の政策スタンスに大きな差異が生まれており、こうした「国別格差」を活かした投資戦略が有効と見ています。例えば、欧州については株式全体はニュートラル(中立)を維持しつつも、金融・産業セクターには選好度を高めています。

BlackRock マクロアウトルック:低ボラティリティ後の市場の脆弱性

BlackRockが別途公表した「A 2026 Global Macro Outlook: Patience(グローバル・マクロアウトルック:忍耐)」は、投資展望本編とは異なるユニークな視点を提供しています。このレポートはBlackRockのグローバル・タクティカル・アセット・アロケーション(GTAA、戦術的資産配分)チームによるもので、マクロファンドの運用戦略から見た2026年の機会を分析しています。

同レポートが強調するのは、「ゴールディロックス(適温相場)」への警戒です。2025年後半、世界の株式市場はDeepSeek問題やドイツの財政出動、米国の関税措置(「解放の日」)などで波乱含みの幕開けとなった後、比較的退屈な低ボラティリティ(低変動性)の上昇相場が続きました。投資家心理は「減税・欧州再軍備・ドル安・FRBの利下げ・AIへの設備投資」というゴールディロックスシナリオを包括的に織り込んでいるとレポートは指摘します。

しかし表面下では、各国のマクロファンダメンタルズ(経済基礎)の差異が拡大しており、株式・債券ともにクロスカントリーのリターン格差が正常化しています。BIIは27カ国のMSCI ACWI(全世界株式指数)構成国における12カ月リターンの分散を追跡しており、国別選択の重要性が高まっていると結論づけています。また、株式市場のバリュエーション(株価評価)はS&P 500の将来収益の一部を既に先取りしており、市場のセンチメント(投資家心理)がAIの費用対便益に対してやや一方的な楽観に傾いているリスクを警告しています。

J.P. Morgan 2026年 投資展望:AIスーパーサイクルが牽引する強気相場

J.P. Morgan Global Research(JPモルガン・グローバルリサーチ)の「2026 Market Outlook」は、BlackRockよりも強気の基調で貫かれています。同社はグローバル株式全体に対してポジティブな見通しを持ち、先進国・新興国を問わず二桁台のリターン(価格上昇率)を予測しています。

AIスーパーサイクルが利益成長を牽引

JPモルガンが最も注目するのは「AIスーパーサイクル(AI超大型景気循環)」の継続と拡大です。同社のグローバル市場戦略責任者、ドゥブラブコ・ラコス=ブヤス氏は「AI主導のスーパーサイクルが記録的な設備投資と急速な収益拡大を促している」と断言します。

数値面では、S&P 500の2026〜27年の利益成長率を年13〜15%と予測しています。これは過去の平均的な利益成長率(年7%前後)を大幅に上回る水準です。また、ChatGPT(チャット・ジーピーティー)が登場した2022年第4四半期以降の累積効果を振り返ると、S&P 500の利益の約75〜80%、設備投資成長の約90%がAI関連企業によって牽引されてきたと同社は分析しています。

AIの恩恵は今後、テクノロジーセクターを超えて広がるとJPモルガンは見ています。具体的に同社が2026年に注目するセクターは、テクノロジー、ユーティリティ(公共事業)、インダストリアル(資本財・産業)、フィナンシャル(金融)、ヘルスケアの5つです。AIが業務効率化や生産性向上をもたらすことで、製造・物流・医療などの分野でも利益成長が加速するという見方です。

金融政策:FRBの利下げが追い風に

マクロ環境面では、JPモルガンはFRB(米連邦準備制度理事会)が2026年にさらに2回の利下げを実施すると予想しています。インフレ(物価上昇)については2026年末までに2.25〜2.5%程度まで低下し、経済成長を支えながらFRBに追加緩和の余地を与える「適温水準」に落ち着くという見通しです。

欧州については、財政刺激策(フィスカル・スティミュラス)の展開と信用環境(クレジット・インパルス)の改善により、ユーロ圏の景気モメンタム(成長加速感)が2026年に改善すると予想しています。利益成長率は13%超が期待され、営業レバレッジの強化・関税ヘッドウィンドの和らぎ・有利な資金調達環境が追い風となります。

日本株への言及:「サナエノミクス」への期待

JPモルガンのレポートは日本にも言及しており、「高市早苗首相(Sanaenomics=サナエノミクス)の経済政策と企業改革が日本株を押し上げる」と分析しています。企業の過剰キャッシュの解放が設備投資・賃金上昇・株主還元を促すと期待されており、日本株への注目度の高まりを示唆しています。

新興国市場:台湾・韓国・インドに選好

新興国(エマージング・マーケット)全体についても、JPモルガンはポジティブな見方を示しています。グローバルなサプライチェーン再編、AI関連の設備投資、エネルギー転換投資が新興国の企業収益の質を改善しているとし、特に台湾・韓国(半導体)やインドを有望視しています。バリュエーション面でも先進国市場と比較して相当の割安感があるとしています。

BlackRockとJPモルガン:両社 2026年投資展望の比較と相違点

両社の2026年投資展望を俯瞰すると、AIを中心的なテーマとして位置づける点では一致しながらも、リスク認識と推奨スタンスに明確な差異が見られます。

株式に対するスタンスを比較すると、JPモルガンがグローバル株式全体に対して強気姿勢を明確にしているのに対し、BlackRockは米国株はオーバーウエイトを維持しつつも、AIの収益化に対して慎重な留保を付けています。BlackRockのグローバル・チーフ・インベストメント・ストラテジスト、ウェイ・リー氏は「投資家はリスクを無差別に広げるのではなく、より意図的にリスクを選択する必要がある」と述べています。

金利・債券に関しては、両社ともに短期デュレーション(金利感応度)を維持する方針ですが、BlackRockがクレジット市場(社債等)における選別的な機会を強調する一方、JPモルガンはFRBの利下げ継続を確信してより広範な固定収益資産を推奨する傾向があります。

地域配分については、両社ともに日本・新興国アジアを注目市場として挙げており、欧州については選別的に取り組む姿勢が共通しています。一方、BlackRockが特にクロスカントリーの相対価値(レラティブ・バリュー)に注目するのに対し、JPモルガンはセクター横断でのAI恩恵の広がりをより重視しています。

日本人投資家への影響と実践的示唆

これら世界最大級の機関投資家向けレポートは、日本の個人投資家にとってどのような意味を持つのでしょうか。2026年の投資展望を踏まえた重要な示唆をいくつか整理します。

円安・日米金利差に注意しながら米国株への投資継続を検討

両社が米国株をオーバーウエイトまたはポジティブと評価している事実は、日本の個人投資家が米国株式ファンドやETF(上場投資信託)を通じて米国株に投資する根拠を与えます。ただし、日本からの米国株投資は為替リスク(ドル円の変動リスク)を伴います。FRBの利下げが進むと日米金利差が縮小し、円高方向への圧力が生じる可能性があります。為替ヘッジ付きの商品と為替ヘッジなし商品を適切に組み合わせる判断が重要です。

AI関連テーマへの分散投資:特定銘柄集中を避ける

両社のレポートはAI関連株への投資機会を強調しますが、同時に「少数のメガキャップ(超大型株)への集中」リスクも指摘しています。日本からAI関連投資にアクセスする方法としては、全米株式型インデックスファンド(iDeCoや新NISAで購入可能な商品)、AI・テクノロジーセクターに特化したETF(eMAXIS Neoシリーズ等)、半導体・AI関連の日本株(東京エレクトロン、ソフトバンクグループ等)への投資などが考えられます。ただしいずれも価格変動リスクが大きく、投資判断は慎重に行ってください。

新NISA・iDeCoを活用した長期分散投資の継続

BlackRockが強調する「分散の幻想」は、短期的なトレーディングよりも長期的な積立投資の重要性を再確認させます。新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠、iDeCoを活用した全世界株式型・先進国株式型インデックスファンドへの積立は、クロスカントリーの分散を自然に実現する手段として有効です。両社のレポートが示すように国別・セクター別の格差が拡大する局面では、地域を絞った集中投資よりも広範な分散が損失抑制に役立ちます。

金利上昇リスクへの備え:債券の短期化と代替資産の活用

BlackRockが警告するレバレッジ拡大と長期金利上昇リスクは、日本の投資家にとっても他人事ではありません。国内の長期国債利回りが上昇した場合、既存の長期債券ファンドの基準価格が下落するリスクがあります。BlackRockが推奨する「デュレーションを短く保つ」戦略を念頭に、債券比率が高いポートフォリオをお持ちの方は、短期債・変動金利型商品への比率調整を検討する価値があります。

まとめ:2026年 投資展望は「能動的な銘柄・国別選択」の時代

BlackRockとJPモルガンの2026年投資展望を総合すると、次のような全体像が浮かび上がります。AIスーパーサイクルは実体経済・企業収益の双方に影響を与える構造的な変化として継続し、株式市場全般のサポート要因となっています。一方で、高レバレッジ化した金融システムの脆弱性、国別収益格差の拡大、株式バリュエーションの高さといったリスク要因も同時に存在します。

2026年の相場は、「ただインデックスを持ち続ける」だけでは不十分で、国別・セクター別の選択眼が問われる局面になりそうです。BlackRockが提唱する「意図的なリスクの取り方」とJPモルガンが強調する「AIの恩恵の広がり」という2つの視点を組み合わせることで、より質の高い投資判断に近づけるでしょう。日本の個人投資家にとっては、新NISAやiDeCoを活用した長期・分散投資の継続を基本軸に置きつつ、AI関連・新興国アジアなどの成長テーマに適度にエクスポージャー(投資配分)を持つポートフォリオ構築が、2026年の投資展望として有力な選択肢となるのではないでしょうか。


参照・出典


※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的とするものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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📝 編集者の視点(元機関投資家アナリストより)

BlackRock・JPモルガンの年初レポートは機関投資家の「集合知」として参照価値が高く、筆者も毎年必ず目を通しています。ただし注意すべきは、これらのレポートは機関投資家向けに書かれており、個人投資家がそのまま実行できる内容ではないという点です。重要なのは「方向性とリスクシナリオの把握」であり、具体的な実行は自分のリスク許容度・投資期間・手数料を考慮したETF選択に落とし込む必要があります。

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この記事を書いた人

akaneda1979のアバター akaneda1979 個人投資家・海外投資情報リサーチャー

個人投資家・投資情報リサーチャー。20年以上にわたり国内株・米国株・ETFを中心に資産運用を実践。海外の英語一次情報(SEC開示書類、機関投資家レポート、Bloomberg・Reuters等)を日常的に収集・分析し、AI・エネルギー転換・地政学リスク・新興国市場などの投資テーマを継続的にリサーチ。「Global Investment Trends」では、世界の投資情報を日本の個人投資家向けにわかりやすく翻訳・ローカライズして発信しています。

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