2026年2月、ゴールドマン・サックスの資本集約型株バスケットは、資本軽量型グループを2025年初頭比で約35%上回るパフォーマンスを記録した。AI(人工知能)の普及が進む中、ウォール街では「AIに勝てる株」と「AIに淘汰される株」の分断が急速に深まっている。その分岐点を読み解く鍵が、ゴールドマン・サックスが提唱する「HALO効果」だ。
本記事では、ゴールドマン・サックスの最新レポートをもとに、AI相場の新局面で日本人投資家が注目すべき投資戦略と具体的な銘柄の方向性を解説する。
HALO効果とは何か:AI時代の新たな投資指標
ゴールドマン・サックスのストラテジスト、ギョーム・ジェイソン氏とピーター・オッペンハイマー氏が提唱する「HALO効果」とは、Heavy Assets and Low Obsolescence(重厚な資産・低い陳腐化リスク)の略称だ。
簡単に言えば、AIに置き換えられにくい「物理的資産を持つ企業」が市場で評価されるという現象を指す。具体的には以下のような特徴を持つ企業が該当する。
- 工場・物理的サプライチェーン・専門設備を持つ製造業
- 電力グリッド・パイプライン・輸送インフラなどのインフラ企業
- ユーティリティ(公益事業)・基礎資源・エネルギー関連
- 複製コストが高く技術的陳腐化リスクが低いビジネス
ジェイソン氏は「市場は今、キャパシティ(生産能力)・ネットワーク・インフラ・エンジニアリングの複雑性を評価している」と述べており、これらの資産は「複製コストが高く、技術的陳腐化にも強い」と分析している。
AI株の二極化:勝ち組と負け組の明確な分断
2026年2月時点で、ゴールドマン・サックスのソフトウェア銘柄バスケットは7営業日連続で下落し、年初来マイナス19%という大幅な損失を記録した。この売り圧力はNasdaq 100指数にも波及し、2026年に入って同指数は1.4%下落している。
一方で、同行が選定した「AIに代替されにくい企業」のロング(買い)バスケットは堅調なパフォーマンスを示している。
AIに強い「勝ち組」企業の特徴
ゴールドマンがAIに代替されにくいと評価する企業の共通点は、スイッチングコスト(乗り換えコスト)の高さだ。スイッチングコストとは、顧客が別のサービスや製品に乗り換える際に発生するコスト・手間のことで、これが高いほど顧客が離れにくい。
具体的には以下のような企業が挙げられている。
- Microsoft(MSFT):ほぼすべての大企業が依存するクラウド・AIインフラを提供。乗り換えコストが極めて高く、AI普及の恩恵を受けやすい
- Oracle(ORCL):企業の業務フローに深く組み込まれたデータベースシステムを提供。代替に多大なコストと運用リスクが伴う
AIに弱い「負け組」企業の特徴
反対に、売り圧力を受けているのは「労働集約型ワークフロー」に依存するソフトウェア企業だ。ゴールドマンの分析では、売上高に占める人件費の割合が主要なスクリーニング指標として使われている。人件費比率が高い企業ほど、AIによる業務自動化の影響を受けやすく、株価下落リスクが高いと見なされる。
ハイパースケーラーの巨大投資:2026年の設備投資は6500億ドル超
AI投資の規模感を示す数字として、ゴールドマン・サックスは2026年単年でのAI関連設備投資(capex)が6500億ドル(約100兆円)を超えると予測している。さらに、主要なAIハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)5社は、2023〜2026年の間にAIインフラ構築に計1.5兆ドルを投じる見通しだ。これは、2022年以前に同社群が歴史上投資してきた総額6000億ドルを大幅に超える規模となる。
こうした巨大投資を支えるのが電力インフラだ。ゴールドマンの試算では、データセンターの電力消費量は2030年までに2023年比で175%増加する見通しであり、電力会社・エネルギーセクターへの資金流入が加速している。
Morgan Stanleyも同調:欧州でも始まるAI株の持ち高削減
ゴールドマン・サックスの見立てはウォール街全体に広がっている。Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)のストラテジストも同様に、ソフトウェアなどの資産軽量型セクターからの資金流出を指摘している。
欧州では2025年末の時点で、ロング・オンリーファンド(売り持ちをしない買い専門の投資ファンド)がすでにAI混乱リスクにさらされている銘柄のポジションを削減し始めていた。グローバルレベルで、資産軽量型から資産重量型への資金ローテーション(移動)が進んでいると言えるだろう。
欧州でゴールドマンが選定した資本集約型バスケット(買い)の代表銘柄には、ASML(半導体製造装置)・サフラン(航空エンジン)・LVMH(高級品)・エア・リキード(産業ガス)・エアバス(航空機)などが含まれている。
日本人投資家への影響と実践的な投資の視点
この「HALOシフト」は日本人投資家にとっても無関係ではない。以下の観点から、ポートフォリオの見直しを検討する価値がある。
①日本株・日本企業への影響
日本は製造業・インフラ・エネルギーに強みを持つ「資本集約型経済」の代表格だ。HALO効果が続く環境では、以下のような日本企業が注目される可能性がある。
- 重工業・機械メーカー(AIに代替されにくい物理的製造プロセス)
- 電力・ガス会社(AI需要増に伴う電力需要の恩恵)
- 半導体製造装置メーカー(AIインフラ構築の川上)
②米国ETFを通じたアクセス方法
日本の個人投資家が米国の資本集約型セクターへアクセスするには、以下のETF(上場投資信託)が参考になる。
- XLU(ユーティリティ・セレクト・セクターSPDRファンド):米国電力・公益事業セクターへの分散投資
- XLE(エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド):米国エネルギーセクターへの投資
- XLI(インダストリアル・セレクト・セクターSPDRファンド):米国工業・インフラ関連企業へのアクセス
- XLB(マテリアルズ・セレクト・セクターSPDRファンド):基礎資源・素材セクターへの投資
これらは楽天証券・SBI証券などの国内証券会社を通じて購入可能だ。
③AIソフトウェア株への過剰集中リスクに注意
日本でもNISA(少額投資非課税制度)を通じたS&P500インデックスファンドや、Magnificent 7(マグニフィセント・セブン:Apple・Microsoft・Alphabet・Amazon・Nvidia・Meta・Tesla)への集中投資が増えている。ゴールドマンの分析が示すように、AI投資の恩恵が均一に分配されない局面では、過度なAIソフトウェア株への集中はリスク要因となりうる。
まとめ:AI相場「第2幕」で問われる銘柄選別の眼力
ゴールドマン・サックスのHALO効果レポートが示す本質は、AI投資の局面転換だ。重要なポイントを整理する。
- AI普及により「資本集約型(物理資産重視)」vs「資本軽量型(人的・デジタル資本重視)」の二極化が進んでいる
- 資本集約型バスケットは2025年初来で資本軽量型を約35%上回るパフォーマンスを記録
- 2026年のAI設備投資は6500億ドル超が見込まれ、電力・インフラ需要が急増している
- Microsoft・Oracleなどスイッチングコストの高い企業はAI時代でも強みを維持
- 労働集約型ソフトウェア企業は自動化の直撃を受けやすく、慎重な判断が必要
AI相場は終わったわけではない。「何に投資するか」から「どの種類のAI関連株に投資するか」という精度の高い選別が、2026年以降の投資成果を大きく左右する局面に入っている。
参照・出典
- Goldman Sachs Has Stark Message for Investors in AI Stocks – TheStreet
- Why AI Companies May Invest More Than $500 Billion in 2026 – Goldman Sachs
- Goldman Team Says Asset-Heavy Stocks Outperform on AI Fears – Bloomberg via Yahoo Finance
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📝 編集者の視点(元機関投資家アナリストより)
ベトナム株への投資は成長ストーリーが明確な一方、市場の制度的未成熟さが依然リスクです。筆者が機関投資家時代に新興国株式を分析してきた経験から言えば、外資規制・取引制度・情報開示水準が整備されていない市場での個別銘柄投資は、機関投資家でも難易度が高い。個人投資家としては、FTSE・MSCI格上げを契機にしたETF経由のアクセスが最もリスク管理しやすいアプローチです。成長テーマへの参加と適切なリスク管理を両立させることが重要と考えます。
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